Yahoo!ニュース×本屋大賞2019で、ノンフィクション本大賞を受賞した「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」。
英国ブライトンの「元底辺中学校」に入学した息子さんの日常が、”母ちゃん”こと、著者のプレイディみかこさんの視点も交えて綴られています。
いたるところに、考えさせられる多くの言葉が散りばめられており、何度も読み返したい本です。

親子の会話がとにかく深い…!
英国の現実や、子どもの柔軟性などから多くのことが学べる「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」の読書感想です。
小説のようなノンフィクション本

「ぼくはイエローで(以下略)」を手に取った理由は、Yahoo!ニュース × 本屋大賞でノンフィクション本大賞を受賞した話題作として、気になっていたからです。

本屋大賞はノミネートだけでも話題になる注目のイベントになったね
ぱっと目につく黄色い表紙には、帽子をかぶった男の子の絵が描いてあり、どことなく青春小説を思わせる雰囲気。
しかし、” 真実は小説よりも奇なり ”という言葉のように、「ぼくはイエローで」に綴られている英国のリアルな現実は、実に複雑で難しくてドキドキさせられます。

11歳で目の当たりにする現実がこれって…と、時に苦しくなる

重い内容もあるけど軽やかで読みやすい文章なんだよね
ノンフィクション本は難しい印象がありましたが、この本は会話が多いからか、難しい内容もイメージしやすく、すらすらと読み進められました。
互いに1人の人間であるということ

ブレイディみかこさんとご家族は、英国のブライトンという都市に住んでいます。
英国というと、ロンドンの歴史ある街並みが思い浮かびます。と同時に、近年は「EU離脱」で国中が揺らいでいました。
興味深いのが、
- 貧困
- 階級
- 人種差別
- 教育格差
- アイデンティティ
- LGBTQ
などの複雑な問題が、中学生の日常を通してリアルに描かれています。
これは一見、英国だけの出来事のようで、私たち日本人も他人事ではありません。
日本でも近年、子どもや女性の貧困問題が叫ばれるようになりました。
LGBTへの理解、外国人労働者の受け入れなど、英国と似たような課題を抱えています。

そして、どの問題も子どものいじめや差別の原因になりかねない
英国の学校では、
- コミュニケーション力を高めるための教科「ドラマ(演劇)」
- シティズンシップ・エデュケーション(政治や社会問題について学び主張するための教育)
など、社会を生きるためのスキルを身に付けます。
多種多様な考えや生き方があることを、早くから学ぶのです。

かたや日本はどうだろう…
例えば、日本国内の外国人労働者の数は、2019年10月時点で過去最多の166万人と増え続けています(日本経済新聞2020/1/31)。
肌や髪の色、価値観、宗教観などは国によってさまざまです。
これからもっと外国の人と触れ合う機会が増えるなか、私たち日本人は、多種多様な生き方や考えを素直に受け入れられるでしょうか。
日本人同士でも乗り越える課題が山積みな現代で、日本人であれ外国人であれ、互いに1人の人間として付き合うために必要なこととは何でしょうか。
散りばめられた言葉の数々

「ぼくはイエローで」を読みながら、” 私には知らないことがまだまだたくさんある ”と改めて思いました。
本書のいたるところに散りばめられた言葉は、言葉自体が初めて聞くものだったり、会話などを通して、いろいろな気付きを与えてくれます。

考えさせられる言葉に頭は常にフル回転!
例えば、息子さんとブレイディみかこさんの親子の会話。
「うん」
「じゃあ、どうして多様性があるとややこしくなるの」
「多様性ってやつは物事をややこしくするし、けんかや衝突が絶えないし、そりゃないほうが楽よ」
「楽じゃないものが、どうしていいの?」
「楽ばっかりしてると、無知になるから」(P59」


そうなんだ!って発見と、どの言葉も見逃したくないって気持ちになる
「ぼくはイエローで」は、親子の会話の多さ、内容の深さに驚き、とても考えさせられます。
もう一度読み直して、ひとつひとつの言葉をよく理解したいと思える、魅力的な本です。
読みながら、「この言葉はどういうことだろう?」と考えられるのは、ブレイディみかこさんや息子さんから、とても重要な課題を出していただいたと思っています。
未来は子ども達の手のなかに

私自身、2人の子を持つ母親です。
将来のことを思うと、子ども達が幸せに暮らせるのか、いらぬ苦労をせず暮らせるだろうかと不安な気持ちになります。
日本の政治経済を見ても、残念ながら「未来は明るい!」と心から思えません。

大人の責任ではあるよね…
しかし、息子さんや息子さんの友人を近くで見てきたブレイディみかこさんは、次のように仰っています。
ドキッとしました。
きっと私は、子ども達を見くびっています。今の大人に対しても、どこかもう諦めているのかもしれません。
ですが、これからの子ども達は、よりIT化が進んだ世界で生きていきます。私たちの想像をこえて、多種多様な価値観に早くからふれていきます。
そして、
まとめ
子どもの成長を通して、英国の現実をリアルに伝える「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」は、多くの人に読んでほしいと心から思えるおすすめの1冊です。
多様性や貧困、アイデンティティなど、ちょっと難しい内容も、軽やかなわかりやすい文章のおかげで、こうも色鮮やかな日常に映るんだなと感じています。

ブレイディみかこさんの思慮深さ、知識の深さも見習いたい…!
「ぼくはイエローで…」は、新潮社のPR誌「波」で2020年3月号まで連載されていました。
続編に期待しつつ、日本の未来がいいものであるように、日本人として私も考え続けていきたいと思います。